洲本簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を罰金二万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
領置に係る淡路政経新聞四千五百部(証第一号)を没収する。
被告人に対し公職選挙法第二百五十二条第一項の選挙権及び被選挙権を有しない期間を三年に短縮する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となる事実)
被告人は淡路政経新聞の編集発行人であるが、昭和三十五年九月四日施行の洲本市長選挙に際し松谷辰造をして当選を得しめない目的を以て自己の右編集人たる地位を利用し、同年八月十七日頃同市由良町由良有限会社牧野儀商店印刷部において印刷し同月十九日頃同市内約千五百戸に対して頒布した同月十五日附同新聞第十号に「洲本怪談、松谷立候補の大陰謀を探る」と題して「松谷辰造は昨年四月の市長選挙においては野口当選の立役者であつて対立候補白川に対し盛んに攻撃のデマ宣伝を行い、野口を当選せしめるとこれを自己の傀儡としてあやつり権勢欲を満足させたところ昨年九月頃から野口が松谷等黒幕陣営の自由にならなくなつたので松谷は野口市長は退陣すべきだと声明してこれと訣別するや同人をボロクソに云い野口打倒に直進した。そして日本でも一流の文化人であるとの自信とあくことなき政権欲が彼を立候補に追込んだ」「松谷は洲本市医師会の会長であり立候補につき同会の推薦を受けたいと種々画策したが、同総会席上では同人の政治節操や悪らつな謀略、人格等に対する批判がなされついに推薦は受けられなかつた」「松谷は洲本高校育友会の会長でもあるが、同校の校舎改築計画は自分が市長になれば近々実現させるとの甘言を用いて立候補しようとしているため学校関係者より右改築問題を市長選挙に利用するものとして不評を買い、同副会長植田和三郎も同人に対して辞任届を送りつけた」との趣旨の選挙に対する報道及び評論を掲載したものである。
(証拠の標目)(省略)
(犯意について)
被告人は当公廷において本件犯意を否認し、弁護人等も被告人が松谷辰造の当選を阻む目的で編集人たる地位を不当に利用したことはない旨主張するのであるが、判示の如き本件新聞の記載態様や判示の時期及び場所においてその印刷頒布が行われた事実に加えて、被告人の検察官に対する昭和三十五年八月二十九日附供述調書中の「(淡路政経新聞)の編集人は私であつて別に記者はおりません。発行人も又私であります。自分で書いて自分で掲載するだけであつて相談相手もなければ手伝いもありません。……その内容たる記事は来たる九月四日の市長選挙に際し立候補を予想されていた松谷を批判したものですが、私は松谷にしろ野口にしろ到底洲本市長たるには適当な人物でないと思つているので、たとえ立候補したところで何れも当選はしないでしようがなお若しかして当選したらいけませんので彼等が当選しない様に市民に充分考えて貰う趣旨でやつたことです。」との供述記載に照らせば本件記事掲載に当り被告人が松谷辰造をして当選を得しめない目的を以て自己の編集人たる地位を利用したものであることを肯認するに足りるから右主張は採ることができない。
(法令の適用)
公職選挙法第百四十八条の二第三項、第二百三十五条の二(罰金刑選択)
刑法第十八条、第十九条第一項第一号、第二項
公職選挙法第二百五十二条第三項
刑事訴訟法第百八十一条第一項本文
(昭和三六年三月二九日洲本簡易裁判所)